青木一平法律事務所

京都烏丸御池にある法律事務所

最終更新:2023年9月20日

目次
  1. はじめに
  2. 離婚の方法
  3. 離婚原因(DV、別居等)
  4. 慰謝料
  5. 親権者
  6. 養育費・婚姻費用
    1. 養育費・婚姻費用とは
    2. 養育費・婚姻費用の調停・審判
    3. 養育費・婚姻費用の額
    4. 養育費・婚姻費用支払義務の始期
  7. 面会交流
  8. 財産分与
  9. 年金分割
  10. 調停に代わる審判
  11. 離婚と苗字(名字)、姓
    1. 夫又は妻の氏
    2. 子の氏
  12. 離婚と戸籍
    1. 夫又は妻の戸籍
    2. 子の戸籍

1. はじめに

夫婦が離婚する場合、離婚することだけでなく、子が未成年であれば父母のどちらが親権者になるのか決めなければなりませんし、 父母のどちらかが慰謝料、養育費、面会交流、財産分与等の主張をすれば、それらについても処理をすることになります。
ここでは、離婚やこれに関連する事項の全体像を解説します。

2. 離婚の方法

① 協議離婚
夫婦間の協議に基づいて行う離婚を協議離婚といいます(民法763条)。

② 調停離婚
家庭裁判所で行う調停が成立した場合の離婚を調停離婚といいます(家事事件手続法244条、268条)。
協議離婚ができない場合は、基本的には、いきなり訴訟を提起するのではなく、まず家庭裁判所に調停を申し立てることになります。 これを「調停前置主義」といいます(家事事件手続法257条1項)。

③ 裁判離婚
離婚の訴えが裁判所に認められた場合の離婚を裁判離婚といいます(民法770条)。 調停を申し立てたものの、調停が不成立となった場合は、家庭裁判所に離婚の訴えを提起することになります。

3. 離婚原因(DV、別居等)

夫婦の一方が離婚を望んでも、他の一方が離婚に応じない場合は、協議離婚はできません。そのため、 離婚を希望する側が調停を申し立てることになり、調停が不成立になれば、離婚の訴えを提起することになります。
裁判においては、裁判所は、民法770条1項に定められている離婚原因が認められるか否かを判断し、 離婚原因が認められれば、基本的には離婚を認容します。
民法770条1項が定める離婚原因は次の5つです。

1号 配偶者に不貞な行為があったとき。
2号 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
3号 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
4号 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
5号 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

1号の「不貞」は、自由な意思に基づく配偶者以外の者との性交をいいます。
5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由」は、婚姻関係が破綻し回復の見込みがないことを意味します。 DV(配偶者からの暴力)、不和による一定期間の別居、勤労意欲の欠如や性交拒否、性格の不一致等が原因で、 婚姻関係が回復の見込みのない程度に破綻している場合等が「その他婚姻を継続し難い重大な事由」とされています。

そもそも離婚原因がない場合や離婚原因を立証できない場合は、離婚の訴えは棄却されます。

4. 慰謝料

離婚に至る原因や事情によって、離婚の際に慰謝料が認められる場合があります。
よく問題となるのは不貞行為が原因で離婚する場合です。 不貞行為の場合、不貞行為をした配偶者と不貞行為の相手との共同不法行為とされていますので、 不貞行為をされた側は、配偶者に対しても不貞行為の相手に対しても慰謝料を請求することができます。
これに対し、慰謝料を請求された側は、不貞行為の当時、既に夫婦関係が破綻していたとして、争うことが多いです。

5. 親権者

父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければなりません(民法819条1項)。
調停離婚において、親権者の指定につき合意に至らない場合に、離婚だけ成立させて、親権者の指定は審判で決めるという考え方もありますが、 実務上は、親権者になれないのであれば離婚しない、という主張になって、結局離婚につき合意ができず、調停不成立で終了し、 その後訴えの提起があれば裁判で決着するという流れになります。
裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定めます(民法819条2項)

6. 養育費・婚姻費用

6-1. 養育費・婚姻費用とは

父母は、子に対し扶養義務を負っています(民法877条1項)。 父母が離婚した場合、そのどちらかが子を養育(監護)することになり、 子を監護する側が監護しない側に子の監護に要する費用を請求することができます(民法766条1項)。これが「養育費」です。

夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する、とされています(民法760条)。 この婚姻から生ずる費用が「婚姻費用」、略して「婚費」です。

養育費と婚姻費用は何が違うかというと、
① 婚姻費用は、婚姻から生ずる費用ですから、離婚するまでの間支払われるべき費用であるのに対し、 養育費は離婚後も支払われるべき費用です。
② 婚姻費用は、例えば子がいない夫婦で夫の方が収入が多い場合、妻は自分の婚姻費用を夫に請求することができ、 その夫婦間に子がいれば、妻は子の監護に要する費用を含めて婚姻費用を請求することができます。 これに対し、養育費は、子の監護に要する費用のみしか請求できません。

6-2. 養育費・婚姻費用の調停・審判

離婚の際には養育費について決めなければならないと民法に規定されているわけではありませんから、 養育費についての取り決めをせずに離婚することも可能です。
養育費・婚姻費用について協議が調わない場合は、原則として、まずは家庭裁判所に養育費・婚姻費用の調停を申し立て(家事事件手続法257条)、 調停が不成立になれば自動的に審判に移行し(家事事件手続法272条4項)、 家庭裁判所が養育費・婚姻費用を定めます。

6-3. 養育費・婚姻費用の額

養育費・婚姻費用の額は、(元)夫婦の協議が成立すれば協議で決めた金額になりますが、 協議が成立せず、家庭裁判所に養育費請求や婚姻費用請求の調停又は審判を申し立てた場合、 家庭裁判所は、基本的には、 養育費・婚姻費用算定表を用いて養育費・婚姻費用の額を算定します。

6-4. 養育費・婚姻費用支払義務の始期

実務的には、養育費請求又は婚姻費用請求の調停又は審判を申し立てた時点から、 義務者に養育費又は婚姻費用の支払義務があるとすることが多いです。
したがって、養育費又は婚姻費用の請求をするのであれば、早めに家庭裁判所に申し立てをすべきと考えます。

養育費・婚姻費用の詳細については、 「養育費・婚姻費用のポイントの解説」をご確認ください。

7. 面会交流

子と離れて暮らす親が、子と面会することを面会交流といいます(民法766条)。

離婚の際には面会交流について決めなければならないと民法に規定されているわけではありませんから、 面会交流についての取り決めをせずに離婚することも可能です。
他方、子と離れて暮らす親が子と面会交流をしたいのに、 子と一緒に暮らす親がこれを拒否する場合等面会交流が実現できない場合は、 原則として、まずは家庭裁判所に面会交流の調停を申し立て(家事事件手続法257条)、 調停が不成立になれば自動的に審判に移行し(家事事件手続法272条4項)、 家庭裁判所が面会交流の可否や方法等を定めます。

8. 財産分与

離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができます(民法768条)。

当事者間で財産分与につき協議が調わない場合は、まずは家庭裁判所に財産分与の調停を申立て(家事事件手続法257条)、 調停が不成立になれば自動的に審判に移行し(家事事件手続法272条4項)、 家庭裁判所が財産分与の有無や対象、額等を決めます。

財産分与は、離婚の時から2年を経過するまでに権利行使をする必要があります(民法768条2項ただし書)。

財産分与の詳細については、 「財産分与のポイントの解説」をご確認ください。

9. 年金分割

年金分割とは、夫婦が離婚した場合に,夫婦の婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割する制度です。 国民年金は分割の対象ではありません。
年金分割をするためには、年金事務所に「標準報酬改定請求書(離婚時の年金分割の請求書)」を提出する必要があります。

年金分割の手続の期限は、原則、離婚等をした日の翌日から起算して2年です。

10. 調停に代わる審判

家庭裁判所は、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で、 事件の解決のために必要な審判をすることができます。これを調停に代わる審判といいます(家事事件手続法283条)。
調停に代わる審判は、養育費・婚姻費用、面会交流、財産分与に関しても可能です。例えば、養育費に関する調停を申し立てたものの、 相手方が出頭しないような場合で、養育費の算出が可能な場合等に、家庭裁判所が調停に代わる審判をすることがあります。

11. 離婚と苗字(名字)、姓

11-1. 夫又は妻の氏

苗字(名字)、姓は、民法では氏といいます。氏名の「氏」です。

婚姻によって氏を改めた夫又は妻は、離婚によって婚姻前の氏に戻ります(民法767条、771条)。
ただし、離婚の日から3か月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離婚の際に称していた氏を称することができます。 これを「婚氏続称」といいます。 手続きとしては、「離婚の際に称していた氏を称する届」を役所に提出することになります。

11-2. 子の氏

例えば、子のある父母が親権者を母と定めて離婚し、母が婚姻前の氏に戻ったとしても、 子の氏が自動的に母と同じになるわけではありません。
この場合に、子が母と同じ氏を称するためには、家庭裁判所の許可を得て、戸籍法の定めるところにより届け出る必要があります(民法791条1項)。 これを「子の氏の変更」といいますが、氏の変更は後述のとおり、戸籍の移動を伴います。
また、子が15歳未満であるときは、その法定代理人(上記の例では母)が、子に代わって手続きを行うことができます(民法791条3項)。

12. 離婚と戸籍

12-1. 夫又は妻の戸籍

婚姻の届出があったときは、原則として、夫婦について新戸籍を編製します(戸籍法16条)。 夫婦が夫の氏を称するときは夫が戸籍の筆頭者になり、妻の氏を称するときは妻が戸籍の筆頭者になります(戸籍法14条)。

夫婦が離婚した場合、婚姻によって氏を改めた者が、夫婦の戸籍から抜けることになります(戸籍法19条)。 例えば、夫婦が婚姻の際夫の氏を称すると決めた場合、夫を筆頭者とする戸籍が編製され、その戸籍に妻も入ることになりますが、 この場合、離婚すると、妻が夫を筆頭者とする戸籍から抜けます。そして、妻は、婚姻前の戸籍に戻るか、 離婚の際に婚姻前の戸籍に誰も残っていない場合や妻の申し出により妻を筆頭者とする新戸籍を編製することになります(戸籍法19条)。

12-2. 子の戸籍

例えば、子のある父母が親権者を母と定めて離婚し、母が新戸籍を編製し、婚姻前の氏に戻ったとしても、 子の氏は父の氏のままですし、子は父の戸籍に残ります。
子の氏を変更するためには、家庭裁判所から子の氏の変更の許可を得て、子を母の戸籍に入れる旨を役所に届け出る必要があります。
なお、母が旧姓に戻らず婚氏続称を選択したとしても、子を母の戸籍に入れるためには、家庭裁判所から子の氏の変更の許可を得る必要があります。 父と母は離婚して戸籍も別になったわけですから、婚氏続称を選択して見た目は同じ氏であったとしても、 離婚後の父の氏と母の氏は別の氏と考えられるためです。

離婚に関するその他の法律問題はこちら